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量の変化を表す(微積の準備)

目次


目的


観測によって得られる物理的意味を持った量を物理量と言います。

物理現象を解析するとき、物理量の変化を客観的に知りたいときがあります。
そこで、量の変化を表す方法である、変化量、平均変化率、比例と正比例を今から解説します。


変化量


ある量が変化したとき、量がどれだけ変化したかをあらわすものを変化量と呼びます。

ある量の変化量は、次のように定義します。
(●の変化量)=(●の変化後の量)-(●の変化前の量)

(●の変化量)=Δ●←Δはデルタと呼ぶ
と書くことにすれば、

Δ●=(●の変化後の量)-(●の変化前の量) -(*)←変化量の定義
となります。

この定義は日常生活でもよく使われています。
たとえば、
体重が50Kgから65Kgに太ったとき、
体重の変化量は、(*)より、
Δ(体重)=(体重の変化後の量)-(体重の変化前の量)
=(65Kg)-(50Kg)
=+15Kg
となるので、体重の変化量は+15Kgと求まります。


物理への応用として次の問題を解いてください。

<問題1>
物体がx軸上を動いている。 最初x = +100mの位置にいた物体が、x = -300m移動した。 移動後の位置はどこか?

<解答>
変化量の定義より、
Δ(位置)=(移動後の位置)-(移動前の位置)
⇔(-300m)=(移動後の位置)-(+100m)
⇔(移動後の位置)= -200m


平均変化率


「変化量」で体重の変化の例をあげました。
では、次のような体重の変化に違いはあるのでしょうか。

(1)1年で50Kgから65Kgになった。
(2)半年で50Kgから65Kgになった。

この二つは、どちらも体重の変化量は+15Kgですが、体重が変化した時間(時刻の変化量)が違います。
(1)では時刻の変化量は1年、(2)では時刻の変化量は半年です。
つまり、時刻の変化量に対して体重の変化量が違う、と言うことです。
((2)は半年で15Kg太ったのだから、(1)と同じ1年であれば30Kg太ることになりますよね)
この違いは、時刻の変化量が関係しているので体重の変化量だけでは表現できません。

そこで、2つの量の変化量が関係しているときの変化を表すものとして、平均変化率を定義します。
(▲に対する●の平均変化率)=(●の変化量)/(▲の変化量)
⇔(▲に対する●の平均変化率)=Δ●/Δ▲ -(**)

平均変化率の定義を使えば、
(時刻の変化量に対する体重の平均変化率)=(体重の変化量)/(時刻の変化量)
⇔(時刻の変化量に対する体重の平均変化率)=Δ(体重)/Δ(時刻)
となるので、

((1)の時間に対する体重の平均変化率)
=(+15Kg)/(1年)
=+15kg/年

((2)の時間に対する体重の平均変化率)
=(+15Kg)/(0.5年)
=+30kg/年

この結果から、同じ時間であれば(2)のほうが体重の変化が大きいことが分かる。


物理への応用として次の問題を解いてください。

<問題2>
(1)速度は、時刻の変化に対してどれだけ位置が変化したかを表したものである(速度の定義)。平均変化率の定義を使って速度を表せ。
(2)車が2時間で100Km走った。車の速度を求めよ。
(3)車が速度が60Km/時間(一定)で3時間走った。車の移動距離を求めよ。

<解答>
(1)速度は定義より、
(速度)=(位置の変化量)/(時刻の変化量)=Δ(位置)/Δ(時刻)

(2)速度の定義より、
(速度)
=Δ(位置)/Δ(時刻)
=(100Km)/(2時間)
=+50Km/時間
(注)今求めた速度は、2時間走ったときの平均の速度であって、2時間の常に+50Km/時間であるとは限らない。

(3)速度の定義より、
(速度)=Δ(位置)/Δ(時刻)
⇔(60Km/時間)=Δ(位置)/(3時間)
⇔Δ(位置)=(60Km/時間)×(3時間)=180Km
(注)平均変化率が一定でない、ここでは速度が一定でないとき、今解いたようにすぐに平均変化率の定義を使うことができない。

(2)、(3)の注については、物理のための微積で詳しく解説します。

時刻と時間の違い
 時刻:時の一点
 時間:ある時刻と別の時刻の時の間
つまり、⊿(時刻)= 時間


比例と反比例


2つの量の変化が関係しているときの変化の関係を表すものとして、比例と反比例があります。

・比例
ある量●がa倍になった時、別の量▲もa倍になることを、●は▲に比例すると言い、
●=k▲ (kは定数)
が成立する。

・反比例
ある量●がa倍になった時、別の量■が1/a倍になることを●は■に反比例すると言い、
●=k'/■ (k'は定数)
が成立する。


物理への応用として次の問題を解いてください。

<問題3>
ニュートンの第2法則によれば、質量mの物体に力Fを与えたときに生じる加速度aは力Fに比例し、質量mに反比例する。この関係を式で表せ。


<解答>比例・反比例の定義より、

加速度は力に比例する⇔a=k'F (k'は定数)
加速度は質量に反比例する⇔a=k"/m (k"は定数)
この二つを合わせて、
a=k F/m (kは定数)

●が▲に比例し、■に反比例するとき、
●=k ▲/■ (kは定数)
が成立する。

(参考)
質量1Kgに加速度1m/s2を生じさせる力Fを1Nと定義すれば、
a=k F/m
⇔1 m/s2=k 1N/ 1Kg
⇔1=k ←(m/s2)=(N/Kg)
となり、比例定数kが1になるので、
a=k F/m ⇔ a=F/m ⇔ F=maを得る。

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投稿者 猫背の狸 、更新日 2006年12月30日