競争の戦略

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競争の戦略

競争の戦略


土岐 坤 , 服部 照夫 , 中辻 万治[ダイヤモンド社]
在庫あり。 価格: 5,913円
あくまで戦略論の一つとして捉えるべき。 2010-08-12
ポーターの『競争の戦略』は、経営戦略論(特に事業戦略)の古典あるいは聖書とまでみなされている向きがあるように感じます。5forces分析の仕方を学ぶためにMBAに行くと思っている人もいるくらいです。

産業経済学の議論を戦略論に適用したのが本書です。内容としては難しく、容易に理解することはできないでしょう。ただ、単純化して述べるならば本書の主張は「業界構造が企業の業績を決める」というものです。
つまり、戦略とは儲かる業界を選ぶこと、ということになります。
おそらく違和感を抱かれる方もいらっしゃるかとは思いますが、『競争の戦略』で述べられているのは本当にこれだけのことです。後は、どのような要因が「もうかる業界か」を決めるのか、ということくらいでしょう。

しかし、そもそも儲かる業界というのはきわめて近視眼的な見方に過ぎません。
なぜなら、儲かる業界は将来的に儲からない業界へと変化していくからです。独占企業が規制に守られて儲かっている業界であるならば、規制がなくなった途端に儲からない業界に変化することは十分ありえることです。
要するに、業界構造が企業の行為を規定し、さらにパフォーマンスを規定するという仮定は必ずしも正しくなく、実際は企業の行為が業界構造を変化させることもある、ということです。

従って、本書で「儲かる業界」を見つけたとしても、それだけでは意味がないということになります。
儲かる業界でどのように好業績を維持するか。これは本書とは別の議論であり、ポーターの『競争優位の戦略』や伊丹『経営戦略の論理』、楠木『ストーリーとしての競争戦略』、ネイルバフ&ブランデンバーガー『ゲーム理論で勝つ経営』等を併せて勉強する必要があるということになります。また、戦略だけが好業績の要因となるわけではありません。組織に関する洞察も深めておく必要があるでしょう。例えば、沼上『組織戦略の考え方』『組織デザイン』、金井『組織行動の考え方』等。


では、本書『競争の戦略』は全く無意味な書物なのかというとそんなことはありません。
本書が有用であるのは、以下のような場合です。
・現在、既に業界構造がある程度固定化している業界を分析する場合
・業界構造が固定化していなくとも、業界の中で各社がどのような行動を採るのかを大まかに予想する場合
・現在の業界構造における常識(良い打ち手、悪い打ち手)を知ることを目的とする場合


以上、長くなりましたが、本書を読む場合は上記のように、あくまで戦略論の一つにすぎないことを理解し、他の戦略論を読むことで戦略的な思考法を補完していく必要があるでしょう。

「古い」とか関係なし・・・バーニーもポーターを前提にRVBを組み立てている 2010-07-20
●「ポーターは経済学を経営に持ち込んだからミクロな分析は無視している」

●「時代は自社の経営資源、つまり内部環境にフォーカスするRBV(リソースベーストビュー)のバーニー。自社リソースを考えないで戦略の実現可能性を無視するポーターは古い」

●「ポーターは何十年も前に書かれた。大量生産の時代でなくなってきているので、使えない」


こういう講釈をのたまう人や発言は鵜呑みにしないほうが良い。決まって一方的かつ極端で、物事を抽象化して「正解」か「不正解」かというフィルターを通してのみに曲解して落とし込むからだ。(そういった発言をしている人間に限って、批評家やライバル学者の受け売りのことが多い)。


どんな戦略や戦術、施策も企業内で実行する際には、その政策の(1)「魅力度」と(2)「実現可能性」の2軸で判断することになる(そして(2)の実現可能性は、どこまで「妥協」するかで決まる運用の問題でもある)。つまり、およそどんな戦略論もその両方(自社と競合、市場/または内部環境と外部環境)を環境分析において整理したうえで戦略オプションを提示し、重みづけをして決定するわけで、ポーターが内部分析を無視しているというのは事実ではない。


ポーターはいくらリソースがそろっていても、参入して儲からない市場には参入すべきでない(お金をかけるべきでない)という前提に立っているため、産業構造の分析に重きを置いて分析している。

他方、バーニーらは、「(これまで正しい戦略を立てても実現できないのが問題だから)実現可能性こそ重要」という前提に立っていると言われるが、これも抽象的な正論であって、ポーターが古い、使えない、という議論の根拠にならない。


(1)魅力度と(2)実現可能性のうち、どちらがより重要か、という前提が間違っているわけであり、両方必須である以上、モレ・ダブりなく分析された結果の戦略オプションであればどちらでもよいということになる。ポーターは内部分析を強化した続編「競争優位の戦略」で内部リソースに関する分析を補完しているし、バーニーはその著書(日本版のみ3部作、原典は1冊)で、外部環境に関してはポーターの産業分析を前提としていることを明記している。


個人的にはその網羅性と掘り下げのロジックの強固さ、そして全体の整合性ではポーターの右に出るものはいないと思う。バーニーはポーターをベースにワークブック的な応用編(実践的な運用<戦術部分>)を新たなフレームで補完したに過ぎない(批判ではなく、そういった立ち位置での評価が正しいということ)。


是非アンチポーターも競争の戦略と競争優位の戦略をもう一度読み込み、個別のフレームワークではなく、全体像を体系的かつ骨太に把握し、理解を促して欲しい。間違いなくファイブフォースや三つの基本戦略、バリューチェーンといった有名なフレームワークの「前提」やそれらが成り立つ「背景」について浮かび上がってくる。

ちなみに、初学者は理解が困難だが、ペンとノートで、1つ1つチャートを合わせて作っていければより理解を促しやすい。文章が多いのは事例があるからで、迷うのは1つ1つの分析がツリー上に何層も掘り下げられているから。その層を見失わないようにできれば、より理解は早いと思われる。



ある種のパラダイムシフトできる一冊 2009-08-02
私は無知式でこの本を買いました。

MBAなんて持っていませんし、必要な職種でもありません
コンサルでもないし、企業を導く立場の人間でもありません
ただ、評判良いってだけで買いました。

非常に解りやすい内容、現実視点で考えられるし、考えをシフトすれば生活、仕事でも使える内容だ。

この本を読み、私の口から多く出た言葉は「見落としていた!」だった
あまりにも視界の狭い自分に気が付かされた。
あまりにも浅はかな考えの自分に気が付かされた。

これは学問的知識ではなく、思考を変える啓発本の様な感触でした。

恐らく、読む分野は違うのに、私の一生に付き合うことになる本であるだろう。

HBRの2008JAN号に最新のUPDATEあり 2008-10-10
HBRの2008JAN号にポーター氏が5フォースについてUPDATED版のレポートを掲載しております。本書(90年代の本)にあわせて、当HBR誌(英語)も熟読することをお奨めします。

自社中心の競争戦略論の一考察である 2006-09-02
 自社の強みを生かし、相手の弱みを突く。それには自社のポジションを正確に分析し、外部環境に対応した戦略が必要になる。MBA流の自社中心主義、自社利益優先の経営が蔓延るわが国に、ポーター氏の説く『競争の戦略』論はこのような社会現象を捉えるフレームとして最適である。ポーター理論を学ぶことは資本の論理による競争の厳しさを学ぶことである。競争重視から抜け出た、より良い社会とするために、ポーター理論を超える新しい理論の構築を期待する。本書は来るべき競争回避社会を模索するためにも呼んでおくべき古典的名著である。